本書の利点は、治験総括報告書(CSR)の「結果」および「考察」部分につき、
ガイドラインに基づいて英語文例と和訳文例が記載され、加えて、英訳ポイントと
和訳ポイントが的確に繰り出されていることです。
CSRのガイドラインに準拠した項目で構成されているため、自分が迷っている
報告表現が、例えば、有害事象のサマリーであれば、12章中に参照できる文例や
ポイントを見つけることができます。
臨床試験報告が和文であっても、英文であっても、word choiceの良否及び表現の
良否が理解できる内容になっていることは、貴重だと思います。
本書は、著者の臨床開発に係わる豊富な経験に裏打ちされた、wording の優れた
指南書でもあります。
国内の臨床試験環境が急速に整備され、臨床試験結果を正確に公表することが
被験者並びに社会によって、要請されいます。
本書は、その要請に応えるレベルの治験総括報告書の翻訳あるいは作成に
寄与するものであると確信します。
ひとつながりの臨床研究として記録される情報は次のような順序になります。
治験総括報告書(CSR)⇒投稿論文⇒インタビューフォーム⇒添付文書
本書は、医薬翻訳者やメディカルライターのかたがたにとって有用であるのみならず、
投稿論文作成を志向して臨床試験を企画している医学薬学系研究者にとっても、
有用かつ有意義なガイドブックとなるでしょう。
「CSRは、投稿論文で十全に網羅し切れない部分を補って、臨床研究結果を読み
解くことを可能にする最高の資料」と、欧米のある医学研究者に言わしめた重要資料
である治験総括報告書。
その治験総括報告書が高品質を保って翻訳され、作成されることに本書が貢献
することを、重ねて確信するものです。
医薬翻訳やメディカルライティングを勉強中のかたがた、国際共同治験の
支援スタッフであるCRA・CRCのかたがた、ひいては、臨床試験を主幹する
医師や医学薬学系研究者のかたがたに、本書が広く読まれることを期待します。
福島県立医科大学 研究推進戦略室/
附属病院治験センター 病院 教授
稲野 彰洋